ミノキシジル 内服

脱毛症診療ガイドラインを読んでみた!2~ミノキシジル内服編~(日本皮膚科学会)ミノキの内服は推奨されていなかった!

ミノキシジルの内服療法は、大丈夫なのか?

日本皮膚科学会が発表している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」というものがあり、その概要について既に記事にしていますが、(記事はこちら

今回は、このガイドラインに記載のクリニカルクエスチョンの中で、私が最も目を引いた、

CQ14 ミノキシジルの内服は有用か?

の内容について記事にしています。結論を先に言ってしまうと、このガイドラインでは、「ミノキシジルの内服療法は、行うべきではない」とされているのですが、ミノキシジルの内服療法は、AGA クリニックにおいてごく普通に行われていて、私が意外に思ったからです。以下に解説を致します。



ミノキシジルの内服は推奨されていない!推奨度D 「行うべきではない」

下表に、同ガイドラインのクリニカルクエスチョンを示しました。推奨度の説明などは以前の記事を参照お願い致します。

表1 Clinical Question (CQ)


この表の、「CQ14 ミノキシジルの内服は有用か?」というクリニカルクエスチョンに対して、このガイドラインでの推奨度はDとなっており、「行うべきではない」となっているのがわかります。



ミノキシジルの内服を、行うべきではない理由とは?

この CQ14に対する解説はガイドラインでは、以下のようになっています。下表に抜粋しています。

推奨度
推薦文ミノキシジルの内服を行うべきではない.
解説ミノキシジル内服の有用性に関して臨床試験は実施されていない.
 ミノキシジルは降圧剤として開発されたが本邦では認可されていない.
また,男性型脱毛症に対する治療薬としても認可されている国はない.
それにもかかわらず,全身の多毛症を起こす副作用があることを根拠に,
医師が安易に処方したり,一般人が個人輸入で入手し服用することがあるので,
医薬品医療機器等法の観点から問題視されている.
 多毛症以外のミノキシジル内服薬の副作用の報告は少なく,
内服用製剤の添付文書中の市販後調査欄に,胸痛,心拍数増加,動悸,
息切れ,呼吸困難,うっ血性心不全,むくみや体重増加などの重大な
心血管系障害が生じるとの記載がある.
 以上のように,ミノキシジルの内服療法は,利益と危険性が十分に
検証されていないため,
男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに行わないよう強く勧められる.
CQ14 ミノキシジルの内服は有用か? の解説


以下に項目を抜粋して、詳細を解説しています。



ミノキシジルの内服薬は認可されていない

医薬品の承認状況を調べるには、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構のサイトを使うことで調べられます。

このサイトを使ってミノキシジルフィナステリドの許認可状況について調べてみました。下表にその結果を示しました。ここで用語の説明ですが、医療用医薬品とは処方箋がないと入手できないもので、一般用医薬品とは処方箋なしでも薬局で買えるものです。

この表を見てみますと、フィナステリド(プロペシアなど)の方は内服薬が承認されている一方で、ミノキシジルについては承認された薬はないことが分かります。認可されていない理由は、ミノキシジルの内服薬が一定条件を満たしていない、つまり、臨床試験に通っていない、ということのようです。

ミノキシジルは、塗り薬(外用薬)の一般用医薬品は販売されているけれども、医療用医薬品としては販売されていないという状況です。

項目ミノキシジルフィナステリド
医療用医薬品該当なし13件
(内服薬のみ)
一般用医薬品・要指導医薬品6件
(外用薬のみ)
該当なし
ミノキシジル、フィナステリドの認可状況


ミノキシジル、副作用は少ないが、重大な障害が起こる場合がある

また、ガイドラインによれば、ミノキシジル内服薬は、その副作用の報告が少ないというものの、胸痛、動悸などの重篤な副作用が起こるということが書かれています。



このガイドラインにおいて、ミノキシジルの内服療法を行うべきではない理由は、

「利益と危険性が十分に検証されていない」

と結論付けられています。



ガイドラインでは推奨されていないが、AGA クリニックでは普通に処方されている

上記のように、同ガイドラインではミノキシジルの内服療法は推奨されていないわけですが、皆さんご存知のように、AGA クリニックでは、普通にミノキシジルの内服薬が処方されていて、その様子が各病院のサイトに説明されているのを見ることができます。

従って、ミノキシジルの内服薬は、同ガイドラインで推奨されていないし、臨床試験も通っていないけれども、使うことは可能であるという状況は私にはとても興味深いです。

AGA クリニックで、ミノキシジルの外用薬ではなく、内服薬をなぜ使うかは、その内服薬の育毛効果が高いからと予想できます。ミノキシジルの外用薬をそのまま使うだけでは、多くの患者に対して、思ったような育毛効果が得られないのでしょう。



まとめ

ミノキシジルは、もともと血圧降下剤であり、血管拡張作用のある薬なので胸痛、動悸といった症状が起こる可能性のある薬ですが、ミノキシジル内服薬を使用する場合には、注意が必要です。

同ガイドラインで、ミノキシジルの内服療法を推奨していないにも関わらず、AGAクリニックが普通にミノキシジルの内部療法を行なっている理由は、前述の育毛効果の高さ以外に、処方用量を管理することで副作用を抑えられるという知見があるのではないかという風に推測しています。

いずれにしましても、ミノキシジルの内服療法では、血管系の副作用が懸念されているということは頭に置いておいた方がいいでしょう。

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